事務所便り

投稿者:赤沢敬之

事務所の年輪

| 2019年5月20日

去る4月1日、平成天皇の退位と新天皇の就位に伴う新元号が発表され、5月1日から「令和元年」が始まることとなった。

元来、元号は単なる時間の区切りを表すのではなく、中国の紀元前の前漢時代の武帝が統治の道具として使い始めたもので、わが国も「大化」に始まり、明治以降は「一世一元」の制度として国民統治の機能を果たしてきたが、国民主権の現憲法下においてもその仕組みを維持しつつ、そうした意味合いを払しょくした一定の時の流れいわば「時代」を象徴する道具として活用されている。

公文書では、時の表現として元号が使用され、国際化時代の現代では西暦の表示も併用されている。時の政府の民意無視と復古への憧れが際立つ昨今の政治の流れにおいて、新元号が発祥の時代への里帰りを象徴するものとして利用されないことを強く期待するものである。

 さて、そうした意味で、「平成」から「令和」への移行に際し、私たちの事務所の「年輪」を語っておきたい。

 私が、事務所創立者の山本治雄先生の事務所に入ったのが、昭和36年(1961)4月、司法研修所を出たばかりの「苗木」であった。修習の頃、弁護教官から、アメリカの弁護士の理想的なモデルとして、「仕事は自由に、暮らしは不自由ではないが、莫大な遺産は残さない」と聞かされたことがあり、これをモットーとして出発して以来、樹齢58年の年輪を数えた。元号を適用すると、昭和時代28年、平成時代30年となる。

思えば、高度成長期からバブル崩壊の前半期から停滞と格差拡大、分断の後半期に分かれるが、昭和時代には、昭和43年(1968)から辻公雄弁護士、同50年(1975)から三木俊博弁護士、同56年(1981)から河村利行弁護士が、それぞれ6,7年間事務所に在籍し、また昭和62年(1987)から後半の平成時代30年間を井奥圭介弁護士が事務所を支えてくれた。そして、大学駒場寮で同室であった浦島三郎元裁判官が平成18年(2006)に入所し現在に至る。 

いずれの弁護士も個性豊かで、理論派と実践派という傾向の違いはあっても、自由闊達な仕事ぶり、徒に金銭欲に走らない事件処理や弁護士会活動など社会的活動を通じて、事務所の年輪だけでなく姿形のよさを保持してくれたことに感謝したい。

これから始まる「令和」の時代に、果たして事務所の年輪と姿はどのようになるのか、私も生涯現役の覚悟で努力を重ねたいと念じている。

(ニュースレター平成31年春号より)

赤沢敬之

「振り込め詐欺」にご用心!

| 2016年4月4日

 去る3月29日のことである。仕事を終え夜の10時ごろ帰宅したところ、妻から「秀行がインフルエンザに罹ったのか高熱を発し、明日病院に行くとの電話があった」という話を聞いた。秀行というのは同じ事務所で行政書士の仕事をしている長男のことだが、緊急の連絡先として病院に実家の電話番号を教えておくとも話していたとのことだった。

 当日私は、朝から宝塚の関係先の会社に出かけ、事務所に戻ったのが午後6時前。秀行の予定表には4時前に外出してどこかの会議に出ていると記載されており、1日顔を合わせなかったので、夕刻以降に発熱したのかなと思い、夜も遅いので様子を見ることにしてその日は連絡をせず終わった。

 翌30日の午前11時過ぎ、出勤しようとしていた頃、妻が「秀行から」といって受話器を渡すので、電話に出て「病院の診察はどうだったか」と聞くと、「インフルエンザではなかった。熱の原因は声帯に病原菌が入り抗生物質の薬をもらった。1週間飲んで効果がなければ手術しなければならないと言われている」とガラガラ声で話す。確かにその声は秀行と言われればそのようにも聞こえる。「今はどこから電話しているのか」と聞くと、「大問題が起きて急遽飛行機で東京に来ている」との話である。「熱を出して東京とは一体どういうことか」「病院はどこなのか」と尋ねると「東京・・」と言ったまま電話が切れてしまった。

 これはおかしいと思い、「LINE」のメールで秀行に「電話が切れて状況がよく分からん。熱を出して東京とはどういうことか」と簡単な顛末を送る。すると、案の定、「おー来ましたか、オレオレ詐欺!なるほどそういう手を使うわけですな」と早速の返信。妻は「声は変わっていたが確かにヒデの声だった」と言っていたと伝えると、「詐欺電話にひっかからないようお母さんにもご注意あれ」ということで、一連の「騒動」は終わった。

 「振り込め詐欺」が新聞を賑わせて久しいが、犯人の手口も益々巧妙を極め高齢の被害者はなお後を絶たないようである。昨27年度の警察庁の統計によれば、認知件数は全国で1万3828件(前年より約90件増)、被害総額476億円(前年より89億円減)という。「振り込め詐欺」には、①成りすまし(オレオレ)詐欺」、②架空請求、③融資保証金詐欺、④還付金詐欺の4類型があるとされ、①がやはり多いようである。

 今回の犯行は、用意周到に前夜に「高熱」「声変わり」の伏線を張り、翌日に「東京に急遽出張」という「緊急事態」を演出し、おそらくは「手術費用」「大問題の解決金」を振り込ませることを狙ったものと思われる。私も前夜の「高熱・インフルエンザの疑い」の電話のことは妻からの伝聞だったので、翌朝も事実として信じており、2度目の電話のあとしばらくは、それが一連のシナリオだったとは気づかず、ただ不審な電話だと思っていただけであった。
奇妙かつ貴重な体験をしたが、くれぐれも不審な電話には万全の警戒を怠らないよう願いたいものである。(平成28年4月1日)

赤沢敬之

嬉しい年賀状

| 2015年1月6日

新年おめでとうございます。本年もどうかよろしくお願い申し上げます。

例年にない厳しい寒さと降雪の中で迎えた正月休みを終え、今日からいよいよ仕事始めです。老いてなお益々の意気込みで仕事と趣味の囲碁に励みたいと願っています。

今年も年頭には多くの方々から心暖まる年賀のご挨拶をいただきました。たとえ1年に1回の交信であっても、あゝあの人は今も元気に過ごしておられると面影を想い浮かべることができるのが年賀状の大きな役割ではないでしょうか。

この正月に届いた年賀状の中に、とくに嬉しい便りがありました。今から18年ほど前に相談を受けたある女性からのものです。当時別居中の夫が大阪から上京して、女性の実家に無断で侵入し、小学入学前の長男を不法に拉致したことから子の奪い合いとなり、その後離婚訴訟に勝訴したあと和解により解決したのですが、その頃事務所によく同行していた4歳の可愛いらしい「長女が昨年大学を卒業し中学校の英語の先生になりました。本当に安心しました。全て赤沢先生のおかげです。あの時私達を支えて下さりありがとうございました」との添え書きがあったのです。

女性とはその後も賀状の交換はしていたのですが、女手ひとつで苦労して育てたあの女の子が今や中学校の教壇に立つとはと尽きぬ感慨を催したものでした。そして、これほどの感謝の思いを伝えていただいたことに、新しい年の門出にふさわしい贈り物であり、これこそ弁護士冥利に尽きるものと感動した次第でした。

赤沢敬之

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