弁碁士の呟き

囲碁雑録(4)-1986年『ハンさんの「宇宙流」』①

| 2017年5月19日

世界アマ選手の来阪

 六月初めの日曜日、吹田市文化会館(メイシアター)で世界アマ囲碁吹田親善大会が開催されるとの新聞記事を見て、早速世話役の一人である畑良武さんに参加の申し込みをして、当日とるものもとりあえず会場に駆けつけた。

 この企画は、たしか4年ほど前から始められ、今年は4回目にあたるはずだった。
毎年5月頃東京や稀に大阪で行われる世界アマ囲碁選手権大会のあと、世界各国から選抜されて参加した代表選手たちとの親善交流をめざして、万国博開催の地吹田市に代表団一同を招くという壮大かつ有意義なこの試みは、吹田市囲碁連盟や吹田市国際文化交流協会の人々の献身的なボランティア活動に負うものであり、回を重ねる毎に盛会の一途をたどっている。

 今年の第8回世界選手権戦は、東京の日本棋院で5月27日から30日にかけて34か国からの強豪34人で争われ、香港の陣嘉鋭七段が優勝、日本代表菊池康郎七段が2位、中国の宋雪林七段が3位という結果であった。
今回は、初めてソ連からジェトコフ六段が参加して15位の好成績をあげたほか、およそ囲碁という東洋的なゲームからは連想もできないようなフィンランドとかノルウェーなどの北欧からの代表、チェコスロバキアやポーランドなどの東欧勢も意気軒昂で、囲碁の国際化が年々目覚ましく進展していることに目を見張る思いがしたものである。

 今や囲碁界において、中国は日本に追いつき追い越そうとする勢いでレベルアップしているし、韓国、台湾もこれに続いている。
プロの超一流同士の対決で無念の敗北をした昨年の日中対抗戦や今年の訪日代表団の勝ち越しの例は引くまでもなく、プロの世界ですら日本の占めてきた盟主の地位が脅かされそうな様相を呈しているわけだが、アマの場合はすでに10年も前から中国勢の優位がほぼ明らかになっている。
もっとも中国では、プロ制度ができたのが5年ほど前のことで、まだプロ(専業棋士)の数は20人にも満たない少数精鋭であり、しかも段位はプロアマ共通のもので、アマといっても日本の専門棋士の八・九段クラスがかなりいて、これがアマ選手権に出場するのだから、強いのは当たり前ということもできる。
3年前のこの大会の優勝者である馬暁春さんなど出場当時は八段だったが、帰国後しばらくのうちに九段となり、今や中国では聶衛平九段とナンバーワンを争い、日中囲碁決戦でも日本のトッププロと互角の戦いをするというほどの打ち手であるから、根本的に日本の場合と異なるのである。

(②へつづく)

※ 本稿は、1986(昭和61)年10月発行の大阪弁護士会会報に寄稿したものである。当時の弁護士界では囲碁熱が盛んで愛好者が多かったが、最近では高齢層の引退や死去による愛好者の減少を補てんする若手の参入が少なくなっており、回復が急務である。

赤沢敬之

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