弁碁士の呟き

私と囲碁(29) 棋譜並べ③ー呉清源全集と「21世紀の碁」

| 2015年2月8日

new_20150205_001826本因坊道策、秀策と並んで古今の3棋聖と称される呉清源先生が平成26年11月30日に100歳の天寿を全うされた。生涯にわたり囲碁の真理を追求され、昭和3年に14歳で来日されて以来、度重なる苦難を克服して囲碁史に残る貴重な貢献をされた偉大な求道者のご冥福を蔭ながらお祈りしている。

 先生の令名や輝かしい足跡のおおよそは囲碁の道に入ってから承知はしていても、実際に棋譜に接したことはなかった私にとって、昭和62年12月に誠文堂新光社から「全集」が発刊されたのはまさに好機ともいうべきことだった。当時私は、「坂田栄男全集」の棋譜並べのほぼ半ばに至っていたが、時機逸すべからずとの思いで早速「呉全集」を注文し、無謀にもこの2つを並行して並べることとしたのである。

 「呉清源全集」は15巻のうち11巻に昭和3年から同48年までの788局が収録されている。昭和63年1月1日から、先生来日のきっかけとなった橋本宇太郎4段との試験碁をはじめ、木谷實師と信州地獄谷で考案した「新布石」の実戦や戦前の打ち込み十番碁の数々など、その華麗な変幻自在の打ちまわしをただ感嘆しながら、平成8年11月まで約8年間をかけて鑑賞することができた。この「全集」並べが呉先生の謦咳に接するという思わぬ幸運を呼んでくれたのだが、それは後に触れることとしたい。

new_20150130_201134 「全集」並べを終えたあと、平成9年に「21世紀の碁」10巻が発行された。「碁は調和である」と喝破された先生の布石を中心とした最新の到達点を網羅された大作である。事務所に置いて、暇を見ながら今度はパソコンに棋譜を入力し、解説の主要点を書き込んだ。平成15年に一通り終えることができ、大いに勉強になった。これは今も随時活用させてもらっている。(続)

赤沢敬之

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