2020年1月1日
【ニュースレター第5号(2020春号)「知っ得!相続クイズ①」解説】
問題1 子猫をもらったら贈与税はかかる?
答え ②かからない(ただしかかる場合もある)
【解説】
1 知り合いから頼まれて生まれたての子猫を引き取るようなことはよくあることですよね。このとき「贈与税」のことを考える人はそう多くはないと思います。そのとおりで、一般的に知人間でのペットのやり取りで贈与税がかかることはほとんどないといっていいでしょう。
2 贈与された財産の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に従います。それによると、子猫のような動物の財産評価については市場価格や専門家の鑑定価格によることなっています(財産評価基本通達134項)。そうすると、一般的にいえば、家庭でやりとりされるような子猫に値段がつくことはそうそうなく、したがって、知り合いから子猫を譲ってもらったとしてもほとんどの場合は贈与税は発生しないというわけです(ただし、何百万円もするような高価なペットをもらった場合は別です)。
3 なお、高価なペットでも、評価額が110万円までなら基礎控除の範囲内ですので、やはり贈与税は発生しません(相続税法第21条の5、租税特別措置法第70条の2の4)。
4 ただし、ペットの世話をすることを条件にペットとともに飼育費用を譲り受けた場合(負担付贈与といいます)は贈与税にご注意。
問題2 愛犬に遺言で遺産を残すことはできる?
答え ②できない
【解説】
以前アメリカで何億もの財産を相続したマルチーズやチワワの話が話題になったことがありましたが、日本では残念ながらペットに遺産を相続させることはできません。日本の法律上、ペットは原則「物」として扱われるため、「人」と対象とする遺言はできないことになっています。したがって、たとえ愛犬に財産を残す遺言を書いたとしても、その部分は法的に無効となってしまいますので注意が必要です。
問題3 次のうち相続財産にならないものは?
答え ②仏壇
【解説】
相続人は、相続開始の時から、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。ただし、系譜(家系図など)、祭具(仏壇仏具など)及び墳墓(墓石・墓地など)の所有権は、祖先の祭祀を主宰すべき者(祭祀主宰者)が承継することになっています(民法897条)。つまり、これらの財産は原則として相続財産とはならならず、祖先の祭祀を司るのに適した者(被相続人の指定、慣習、裁判などで決まります。相続人に限りません)が取得することになっているのです。
ちなみに、上記の財産を祭祀主宰者が取得した場合、それに対する相続税はかからないことになっています(相続税法12条2項)。
問題4 自分亡き後、ペットを託す方法って?
答え ①贈与 ②遺言 ③信託 全部
【解説】
問題2にもありますが、ペットに遺言で遺産を相続させることはできません。そこで、死後にペットを誰かに託したい場合は、次の3つの方法を検討することになります。
①贈与
正確には「負担付死因贈与」となります(民法553条・554条)。これは、飼い主が亡くなった場合に、ペットの世話を条件として財産を贈与する旨の契約を、世話をしてくれる人と生前のうちに結んでおくものです。
②遺言
正確には「負担付遺贈」となります(民法1002条)。これは、世話をしてくれる人に宛てて、ペットの世話を条件として相続財産を譲る旨の遺言を書いておくものです。①の死因贈与契約と違って一方的に残すものなので、当の世話人が相続放棄をしてしまえば願いはかないません。ですので、世話をしてくれる人に予め主旨を伝え、お願いをしておくことが肝心です。
①②とも、しっかり世話をしてくれるかを監視してくれる存在として、死因贈与執行者、遺言執行者を別途立てておくと安心です。
③信託
いわゆる民事信託(家族信託)といわれるものです(信託法)。これは、現飼い主(委託者といいます)が、飼育費用を預かって管理してくれる人(受託者といいます)と契約を結び、その中で、受託者は新しくペットの世話をしてくれる人(受益者といいます)に飼育費用を渡す、というふうに定めておくものです。①②と異なり飼い主が亡くなる前から効力をもたせることができるので、万一飼い主が認知症になったり事故で入院したような場合でも、ペットの世話を託すことができるのがメリットです。
このように法的にペットを託す方法はいろいろありますが、一番大事なことは、世話を任せることのできる人を予め探しておくことでしょう。