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[判例]嫡出否認「夫のみ」の規定、合憲で確定(2月5日最高裁第2小法廷)

2020年2月10日

民法は「妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する」と規定しています(民法722条1項)。また、離婚後でも、300日以内に出生した子は「婚姻中に懐胎」したものと推定されます(同2項)

そこで、例えば、夫婦関係が破綻したあと、別居中に新しいパートナーとの間に子供が生まれた場合や、離婚後すぐに新しいパートナーとの間の子が生まれたような場合、その子供は「前夫の子」と推定されることになります。

 

この場合、前夫としては、自分の子ではないことはわかっていますから、推定された父子関係を否定したいでしょう。そこで、民法は、夫に対して、推定された子との父子関係を否定するための手続を用意しています(嫡出の否認、嫡出否認の訴え民法724725条)。

嫡出否認調停の手続き(裁判所)

 

しかし、同じように、妻がこの手続を使って、我が子が「前夫の子」であるとの推定を否定することができるかといえば、実は、現在の民法では認められていません。嫡出否認の申立ては「夫」にしか認められていないのです。

そこで、「前夫の子」との推定を受けたくない(前夫の戸籍に載せたくない)妻としては、新しいパートナーとの間でできた子の出生届を出さない、という事態が生じます。これが無戸籍児問題の大きな要因となっています。

「無戸籍問題」をめぐる現状と論点 (立法と調査 2016.10 No.381(参議院事務局企画調整室編集・発行)
民法722条(嫡出推定制度)及び無戸籍児を戸籍に記載するための手続等について(法務省)

 

今回の訴訟は、DV被害を受けていた妻が、前夫との関係を断つために出生届を出していなかったケースで、最高裁において、上記民法の嫡出否認の規定が、男女平等を定めた憲法に反するかどうかが争われました。

嫡出否認「夫のみ」合憲が確定 最高裁が上告退ける(日経新聞2/7)
夫のみ嫡出否認「合憲」確定 女性側の上告退ける―最高裁(時事通信2/7)

 

結論的には原告の上告は退けられ、上記規定を「合憲」とした一、二審判決が確定しましたが、憲法判断は示されませんでした。つまり、嫡出制度のあり方については、高裁が言及したように「国会の立法裁量に委ねられる」ことになったわけです。

今後ますます議論が活発化しそうです。

法制審議会民法(親子法制)部会第1回会議(令和元年7月29日開催)(法務省)
嫡出推定制度を中心とした親子法制の在り方に関する研究報告書(法務省)

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