境界問題Q&A

境界問題Q&A > 2 取得時効 > 13.道路や水路敷などの公共用地も取得時効の対象になるのですか。

13.道路や水路敷などの公共用地も取得時効の対象になるのですか。

 行政主体によって公の目的に直接供される道路、河川、公園、公立病院などを公物と言い、これには、公用物(国または地方公共団体自体の公用に供されている物。例えば、官公署、公立病院などの建物や施設)と公共用物(道路、河川、公園など、直接一般公衆の共同の使用に供されるもの)の2種類があります。
    公用物については、官公庁自体が現に使用しているので、取得時効が成立する事態はまず考えられません。
    問題は、公共用物について取得時効が認められるかどうかです。この問題について、戦前の大審院(現在の最高裁に相当)は、一貫して、公物はその性質上取得時効の対象とならない、公物の公用廃止には行政庁の明示の意思表示を必要とするとの立場をとっていましたが、最高裁は、昭和51年に次のような判決を出し、公物(公共用物)も一定の場合には取得時効の対象になることを認めました。
      最高裁昭和51年12月24日判決
          公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、 公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されることもなくもはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には、右公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げないものと解するのが相当である。
    この判決の事例では、係争地は、公図上水路として表示されている国有地でしたが、古くから水田あるいは畦畔に作りかえられ、田あるいは畦畔の一部となり、水路としての外観を全く喪失しており、このような場合には、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の対象となりうるとされたのです。
    ただし、その後の下級審の判例は、黙示の公用廃止は、取得時効を主張する者の占有開始前に既に認められなければならないとして、簡単には取得時効を認めていません。
   ▷ 東京高裁平成3年2月26日判決(訟務月報38-2-177)〈道路に関する事例〉
   ▷ 大阪高裁平成4年10月29日判決(訟務月報39-8-1404)〈水路に関する事例〉

| 2016年12月29日
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