認知症などで判断能力を欠く相続人がいる場合、その相続人が参加した遺産分割協議は後に無効とされる可能性があります(民法3条の2)。
そこでこのような場合、当該相続人にすでに後見人(任意後見人・法定後見人)がついていれば、その後見人が代わって遺産分割協議に参加します。
※任意後見人の場合は代理権の範囲に遺産分割協議が入っていることが前提です。
他方、後見人がついていないときは、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て、成年後見人を選任してもらうことで、以降、選任された成年後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加することができます。
もっとも、認知症といっても病状は様々ですので、認知症だから意思能力がない、遺産分割協議に参加できない、というわけではありません。またいったん後見人をつけると原則、永続的に本人のために職務を行うことになります。したがって、後見人をつけるかどうかは慎重に判断する必要があります。
なお、後見人が同じく相続人である場合は利益相反の問題が出てきます。この場合、後見監督人が選任されている場合は後見監督人が、別途特別代理人の選任を申し立てる場合は特別代理人が、本人を代理して遺産分割協議に参加することになります(860条)。
※後見人をつけるべきかどうか判断に迷う場合、成年後見人の手続き、特別代理人の選任手続きなどについてご不明な点がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
民法3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
(後見開始の審判)
第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(成年被後見人及び成年後見人)
第8条 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
(成年後見人の選任)
第843条 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
(利益相反行為)
第860条 第826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。