民法上の所有権の客体となる『物』は形のある「有体物」とされていますので(民法85条)、スマホやパソコンなどに保存されている形のないデジタルデータそのものが『物』として相続財産になることはありません。
ただし、著作権等の知的財産権の対象となるデータなどは、財産的価値がある権利として個別に相続の対象となりえます。
また、そのような場合以外でも、データが保存されている物としてのデジタル機器の相続に併せて包括的にデータを承継することで、事実上データを相続することは可能でしょう。
一方、クラウドストレージやプロバイダ、ブログ、SNS、ホームページなどのオンラインサービスに保存されているデジタルデータについては、物としてのデジタル機器の相続ということが考えられません。
そこで、当該サービスの契約関係を相続することにより、事実上データを相続するという形になるでしょう。
ただし、個々のオンラインサービスによって個人アカウントを一身専属のものとして原則承継を認めない場合や、契約の承継に期間制限を設けている場合もあるため、当該サービスの規約内容をよく確認しておく必要があります。
※たとえばプロバイダのIIJmioの約款によると契約の承継には相続人による2週間以内の申請が必要とされています。
いずれにせよ、デジタル遺品といわれるデータの相続に関してはまだ統一的に規定する法律はなく、発展途上の論点といえますので、今後の立法や業界の対応を見守る必要があります。