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(その4)相続法改正①「配偶者の居住の権利の保護」

2019年8月29日

  私たちの家族の関係から、人と人との取引、さらには事故を起こした時の賠償まで、生活のあらゆる関係を規律する基本となっているのは民法という法律です。

  実はこの民法、制定されたのは日露戦争より前の明治31年でした。そんな古い法律がAI革命が叫ばれている現在まで通用しているというのはちょっと驚きですが、案外、人と人との関係の基本は明治時代から変わっていないということかも知れません。

  とは言っても、そこはやはり、時代の変遷にともない、そのまま適用したのでは不都合な部分は出てきますので、何度か、マイナーチェンジを繰り返しながら今に至っています。

  中でも、第五編の相続法に関しては、昭和55年に比較的大きな改正がされましたが、それから40年近くが経ち、平成30年7月の国会でいくつかの重要な改正がされました。

今回の改正のポイントは以下の3点です。

①配偶者の居住の権利の保護
②遺言の利用の促進
③相続人を含む利害関係人の実質的公平

  ということで、今回は、とりあえず、①の配偶者の居住の権利の保護についての説明です。
  新たに2つの権利が創設されました。配偶者居住権(第1028条~)と配偶者短期居住権(第1037条~)です。

   配偶者居住権とは、亡くなった人の配偶者が遺産である建物に居住していた場合に、そのままその建物に無償で居住できる権利のことです。

法務省パンフレットより

  改正前の民法では、配偶者が遺産の建物に引き続いて居住するには、遺産分割により自らその建物の所有権を取得するか、その建物を取得した別の相続人(例えば、子など)との間で新たに賃貸借契約を結ぶことなどが必要でしたが、そのような負担を負わせずに、配偶者の居住の権利を保護しようとしたものです。

 配偶者居住権の評価は所有権よりも低いので、配偶者居住権を取得した配偶者は、建物の所有権を取得した場合に比べて、相続分の範囲内でさらに他の遺産を取得できる可能性が高まることになります。

  この配偶者居住権は、相続人間の遺産分割か亡くなった人の遺贈又は死因贈与によって発生します。そして、この配偶者居住権は、配偶者だけに認められるもので、譲渡することはできず、また、配偶者が死亡した場合は当然に消滅します。

  これに対して、配偶者短期居住権とは、亡くなった人の配偶者が遺産である建物に居住していた場合に、遺産分割によりその建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、その建物に無償で居住できる権利のことです。これは、遺産分割が確定するまでは配偶者がそのままその建物に無償で居住できるようにするとともに、最終的に配偶者が居住建物について引き続き居住する権利を取得せずしたがってその建物から退去しなければならなくなる場合でも、転居するために必要な猶予期間として少なくとも相続開始時から6か月の期間を確保しようとしたものです。

  さらに、夫婦間で、生前に、住んでいる家を贈与した場合、これまでは、その贈与は遺産を先渡ししたもの(特別受益)として、遺産分割の際における取り分を計算することにされていました。それが、改正民法では、結婚期間20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与がなされた場合、その贈与は、特別受益として取り分の計算には入れないことにされています(第903条4項)。これにより、配偶者はさらに多くの住居以外の遺産を取得できることになります。

  以上の改正のうち、居住用財産の特別受益からの除外は2019年7月1日から既に施行されており、配偶者居住権と配偶者短期居住権とは2020年4月1日から施行される予定です。

井奥圭介

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