弁碁士の呟き

私と囲碁(78)「碁縁の不思議さ」女流棋士三島響さんとの出会い

| 2025年5月21日新着

4月初めの土曜日の午後、梅田新道の第三ビルにある爛柯囲碁俱楽部で毎月定例の弁護士有志の「王座研究会」があり、畢生のライバル岡本岳君との対局を終えたのち、二人で地下の喫茶に入り、岡本君に採ってもらった棋譜の検討をしていた時である。

三島響二段、渡辺由宇三段と

夕刻6時過ぎだったか、突然目の前に20代前半の美女が現れ、「碁をなされるのですか」との声。

驚いて何事かと思い、「そうです。今さっき打った碁の検討中です」と答えて前を見ると、連れの若い男性と2人が「私たち関西棋院のプロ棋士です。私は三島響と申します。連れは渡辺由宇です」と自己紹介。「通りがかりに棋譜を見て思わずお声をおかけしました」とのこと。

孫の世代の若手棋士であるお二人の名前は私も知ってはいたが、三島さんは男性棋士だと思っていたので、2度びっくり。

思わぬ出会いに互いに名刺交換をしたあと、「爛柯」での定例会や大阪弁護士会の囲碁の話、関西棋院のプロ棋士との交流の話、AI囲碁のアプリの話などに花が咲いたが、お二人の所用の約束時間が迫ったため、あとの話は事務所に来て頂くこととなりLINEの登録をして店を去られた。

こんな場所で全く偶然にこういう出会いがあるとは、まさに一枚の「棋譜」の媒介による「碁縁」の不思議さであることを痛感させられた次第であった。

後日、事務所にて

そして、旬日後の17日午後4時、お二人が揃って事務所に来られ、冒頭三島さんから「実は私たちは夫婦なんです」とのご挨拶。私も「そうだと思っていました」と答え、用意をしていた拙著「弁碁士の呟き」を差し上げたあと、囲碁よもやま話に移り、主としてAI碁のアプリやソフトについて教えてもらった。

そうこうしているうちに岡本君が午後5時ごろ来所し会話に加わった。

私から「なにわともあれ2子で1局指導願ったら」と提案したが、同君は3子を譲らず対局開始。序盤から中盤まで黒の岡本君が堅実に置き石を活用して地合いでリードしたが、響2段も慌てず騒がずの感で自軍を強化して終盤に至る。

岡本弁護士(左)と三島二段の指導碁

そしてついに岡本君、白の弱点を見つけたのか攻勢に転じたが、攻防のヨミに誤りがあり、狙いが外れ要石を取られて投了。 同君の希望だったヨセの勉強にまで及ばなかった。

対局後、由宇3段を中心に検討が行われたが、私には響2段の堅実な足取りがさすがプロだと感じさせられた一局だった。

その後、お二人に今後の弁護士会若手育成のための指導碁会の企画などへのご協力をお願いし、「一枚の棋譜」から生まれた碁縁の半日を楽しく過ごすことができた。

(ニュースレター令和7年GW号より)

赤沢敬之

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