法律よもやま話

(その22)同性婚訴訟

2025年5月23日

1 今年の3月25日に、大阪高裁第14民事部(本多久美子裁判長)は、京都府などに在住する3組の同性カップルが、異性婚しか認めていない現行の民法等の婚姻に関する諸規定は婚姻の自由を定めた憲法24条や法の下の平等を定めた憲法14条などに違反するとして、国に対し総額600万円の慰謝料の支払いを求めた訴訟について、現行の諸規定は合憲であると判示した一審大阪地裁の判決を覆し、違憲とする判決を言い渡しました。

2 争点となった、憲法24条の規定する「婚姻」の中に同性婚が含まれるかどうかという点について、大阪地裁は、現行の婚姻に関する諸規定が制定された当時に同性婚は想定されていなかったことなどを理由に、憲法24条の「婚姻」に同性婚は含まれないと判断しました。

3 それに対して、大阪高裁は、憲法24条の「婚姻」は異性婚を前提に制定されたものではあるが、将来にわたって同性婚を婚姻制度から排除する趣旨ではなく、同性婚の法制化は、立法府の国会が、国の伝統や国民感情等の社会状況を踏まえて、それぞれの時代の社会の在り方に相応しいかどうかという観点から検討して具体化すべきものであると判断しました。

4 そして、諸外国で同性婚を法制化する動きが広まり、日本国内でも、地方公共団体でパートナーシップ認定制度が急激に広がったり、世論調査で同性婚の法制化に賛成する意見が反対意見を上回っていることなどからすれば、既に同性婚の法制化を受け入れる社会環境や国民意識は出来ている、としました。

5 にもかかわらず、現時点で、国会が、同性婚を法制化せず、同性愛者に婚姻による種々の法的利益を享受できなくしていることは、同性愛者の個人の尊厳を著しく損ない、法の下の平等にも反しているから違憲である、と判示したのです。

6 この同性婚訴訟は、札幌、東京、福岡、名古屋、大阪の全国5か所で6件の訴訟が起こされていますが、今回の大阪高裁判決を含めて、これまでに5つの高裁で違憲判決が出されたことになります。今や、同性婚を認めるのが世の流れと言えますが、いずれ出るであろう最高裁の判決が注目されるところです。

井奥圭介

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