法律よもやま話

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(その24)IT化進む日本の裁判

2026年1月10日

1 日本の裁判制度は、少なくとも5~6年前までは、日本の社会の中でIT化が最も遅れた分野の一つだったと言えると思います。

2 私が弁護士になったのはもう39年も前のことですが、当時は、当事者の主張を記載した準備書面などの裁判書類は全て実物の紙に記載して提出することになっており、それもその次の裁判期日までに提出すれば問題にされることはありませんでしたので、期日の直前に法廷で準備書面を提出するというようなことが横行していました。これでは、裁判官も相手方当事者も書面を読めていませんので、結局、その日の期日には中身の話は全く出来ず、次回の期日を決めただけで終わるということになります。

3 しかし、これでは裁判が遅延することになりますので、平成8年に民事訴訟法が改正され、FAXによる書面の提出が認められるようになり、それに合わせて、裁判所から当事者に準備書面は裁判期日の1週間くらい前までに提出するよう指導されるようになりました。これにより、書面に書かれている内容が分からなくて期日が空転するというような事態は少なくなりました。一般社会からすれば笑止千万かも知れませんが、我々弁護士は画期的な改革だと思ったものです。

4 その後、一般社会でのIT化の進展を受けて、裁判手続にもITを積極的に導入すべきであるという意見はありましたが、なかなか現実化しませんでした。

5 しかし、令和2年に始まった新型コロナウィルスのパンデミックがその動きを一挙に押し進めるきっかけになりました。裁判所は、感染を避けるために、裁判所に来る人の数をなるべく減らそうとし、それまで裁判期日には当事者が裁判所に出頭するのを原則としていたのを、WEBで裁判所と弁護士の事務所をつなぎ、民事裁判では当事者の代理人は自分の事務所にいてパソコン等により手続に参加することが出来るようになりました。これにより、弁護士も、裁判所に行くのは、証人尋問の時など、限られた機会になりました。

6 そして、IT化の動きは書面の提出方法にも及び、今年の5月までに、民事裁判の裁判書類は裁判所が開発したmints(ミンツ)というシステムを使って、インターネットで提出することができるようになり、弁護士が訴訟代理人に就いた場合はそうすることが義務づけられるようになります。

7 紙やFAXで提出していた時代から比べると隔世の感がありますが、これによって日本の裁判制度がどう変わっていくのか、注目されます。

井奥圭介

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