アーカイブ:2026年
2026年8月6日
1 成年後見制度は、認知症などのために判断能力が低下した人に代わって、家庭裁判所から選任された後見人等が本人の財産管理や契約の締結に関与するという制度で、2000年にそれまでの禁治産制度に代わって施行されました。
2 現行の成年後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、後見(判断能力を常に欠く場合)、保佐(判断能力が著しく不十分な場合)、補助(判断能力が不十分な場合)の3つのタイプがあり、タイプ毎に後見人等の権限に差異を設けて、本人のニーズに対応してきました。
3 しかし、この制度については、①後見では、後見人が包括的な代理権や取消権を有し、本人の自己決定が必要以上に制限される、②後見や保佐では、本人の判断能力が回復しない限り利用をやめることができない、③後見人等の交代が困難で、本人がニーズに合った保護を受けることができない、といった問題点が指摘されていました。
4 そこで、先の特別国会において、成年後見制度の内容を大きく変更する民法等の一部を改正する法律が成立しました。主な変更点は、以下のとおりです。
①の問題点については、本人に必要な事項について代理権・取消権を付与する補助の制度に一元化し、後見・保佐は廃止されることになりました。
②の問題点については、利用の必要がなくなったときに制度利用を終了することができるようになりました。
③の問題点については、補助人の解任事由に「本人の利益のために特に必要があるとき」が追加され、例えば、補助人が本人との面談を行わないために本人が適切な保護を受けられないときなどにも解任できるようになりました。
5 改正法は2028年の夏以降に施行される見込みですが、補助に一元化された新しい制度が、判断能力が衰えた人の生活をサポートするものとして、どのように機能していくのか、注目されます。
2026年1月10日
1 日本の裁判制度は、少なくとも5~6年前までは、日本の社会の中でIT化が最も遅れた分野の一つだったと言えると思います。
2 私が弁護士になったのはもう39年も前のことですが、当時は、当事者の主張を記載した準備書面などの裁判書類は全て実物の紙に記載して提出することになっており、それもその次の裁判期日までに提出すれば問題にされることはありませんでしたので、期日の直前に法廷で準備書面を提出するというようなことが横行していました。これでは、裁判官も相手方当事者も書面を読めていませんので、結局、その日の期日には中身の話は全く出来ず、次回の期日を決めただけで終わるということになります。
3 しかし、これでは裁判が遅延することになりますので、平成8年に民事訴訟法が改正され、FAXによる書面の提出が認められるようになり、それに合わせて、裁判所から当事者に準備書面は裁判期日の1週間くらい前までに提出するよう指導されるようになりました。これにより、書面に書かれている内容が分からなくて期日が空転するというような事態は少なくなりました。一般社会からすれば笑止千万かも知れませんが、我々弁護士は画期的な改革だと思ったものです。
4 その後、一般社会でのIT化の進展を受けて、裁判手続にもITを積極的に導入すべきであるという意見はありましたが、なかなか現実化しませんでした。
5 しかし、令和2年に始まった新型コロナウィルスのパンデミックがその動きを一挙に押し進めるきっかけになりました。裁判所は、感染を避けるために、裁判所に来る人の数をなるべく減らそうとし、それまで裁判期日には当事者が裁判所に出頭するのを原則としていたのを、WEBで裁判所と弁護士の事務所をつなぎ、民事裁判では当事者の代理人は自分の事務所にいてパソコン等により手続に参加することが出来るようになりました。これにより、弁護士も、裁判所に行くのは、証人尋問の時など、限られた機会になりました。
6 そして、IT化の動きは書面の提出方法にも及び、今年の5月までに、民事裁判の裁判書類は裁判所が開発したmints(ミンツ)というシステムを使って、インターネットで提出することができるようになり、弁護士が訴訟代理人に就いた場合はそうすることが義務づけられるようになります。

7 紙やFAXで提出していた時代から比べると隔世の感がありますが、これによって日本の裁判制度がどう変わっていくのか、注目されます。