私と囲碁 | 2014年10月26日
昭和56年の大阪弁護士会第4回大会は、決勝リーグで三宅一夫6段、元裁判官の坂速雄6段という超ベテランと新進の西垣剛5段が好成績を収め、優勝戦は三宅、西垣の新旧対決となった。私は三宅先生に返り討ちに会い、また所用で決勝戦を観戦できなかったが、立会人兼記録係りを務めた事務所の山本治雄先生の話と三瀬顕4段の「観戦記」で当日の模様を知ることができた。これがまたアマの碁として未曾有の対局であったので、紹介しておきたい。
対局は3月24日午後2時過ぎに西垣さんの黒番で始まったが、両者序盤から長考を重ねる。そのせいか「数人の観戦者の雑談の花が賑々しい。山本先生が突然に威厳ある一喝パンチ、『対局者が喋るのはかまわんが、周囲がうるさすぎる!』確かにこれぞ碁の作法、誰が一番こたえたか」と観戦記。碁は双方の苦心の攻防が続き、開始後4時間を経てなお100手位の進行で「持久戦、体力戦に入った。両雄とも気合いが入り、沈黙が続く」150手目にコウ争いが始まった頃には、会館の閉館時間が迫り、夜9時過ぎに白160手を封じ手として打ち掛けとなったという。
翌日正午前に事務所で山本先生から、「二人とも長考を重ねるので、ワシは明日は立会を畑君に譲ることにした」と前日の模様を聞かされ、何よりも喜寿を超えた三宅先生の体力、持久力に敬服したことを思い出す。そして、1日おいた3月26日正午より打ち継がれた対局は、午後5時にようやく終局に至り、黒番の西垣5段が初優勝を飾った。2日がかりで延べ12時間になんなんとするプロ顔負けのこの長時間対局について、三瀬観戦子は「味わい深い闘いであった。大阪弁護士会の碁界はいよいよ意気軒昂、桜満開の様相で頼もしい」と観戦記を締めくくっている。西垣さん若さの勝利であった。
なお、後日談だが、しばらくして西垣さんに会ったとき、優勝を祝するとともに、「弁護士碁界のために手合時計を寄付したら」と冗談交じりに話したところ、やがて2台の手合時計が弁護士会に届けられ、今も時折活用させてもらっている。(続)