事務所便り

パリオリンピックに想う

| 2024年9月17日

 残暑お見舞い申し上げます。

 国連のグテーレス事務総長が発した〝地球沸騰化〟という言葉どおり、連日のように気温が35度を超える猛暑日が続いた今年の夏でしたが、その夏をさらに熱くしたのがパリオリンピックでの日本選手の活躍でした。

 大会前からメダル確実と言われ実際に獲得した選手、逆に実力を出し切れずメダルを逃した選手、かと言えば、大会前は全く注目されていなかったのに伏兵のように現れメダルを獲得した選手など、結果は様々ですが、どの選手も、日ごろの練習の成果を発揮して懸命に競技する姿は、見る者に感動を与えてくれました。そうした全ての選手に、「よくやった。お疲れさま。」と声をかけてあげたい気持ちです。

 ところで、3年前、コロナ禍のもと、無観客で行われた東京オリンピックは、新たな男女混合種目の実施等に見られる〝多様性の尊重〟が目指す理念でしたが、今回のパリオリンピックはどうでしょうか。世界情勢として、東京オリンピックの時と決定的に異なる点は、その後の2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、さらに2023年10月にはイスラエルによるガザ地区侵攻も始まって、世界がにわかに戦争の方向にシフトしたことです。

 近代オリンピックの起源となった古代ギリシャのオリンピックは、伝染病の蔓延を防ぐには都市国家同士の争いをやめ競技会を開催せよとの神の啓示にもとづいて始められたとされ、大会開催中は参加国に休戦が義務付けられました。 近代オリンピックは、それを引継ぎ、スポーツを通して「平和な世界」を実現することを一つの理念にしていますが、パリオリンピックでは、前記のような世界情勢をふまえて、その理念が改めて大きくクローズアップされました。

 しかし、現在でも、国同士の争いは無くならいばかりか、大会開催中も戦地での戦闘は続けられている現状を見ると、果たして人類は古代オリンピックの時代に比べて進歩したのだろうかと悲観的な気持ちにもなります。

 しかし、今や、人類は、地球温暖化という、伝染病よりも恐ろしい共通の敵に直面しているのですから、一致団結してそれに立ち向かわなければなりません。ただでさえ沸騰した地球の大地に爆弾を落とし合ってさらに温めている場合ではないはずです。そんなことを考えさせられた今回のオリンピックでした。 (弁護士 井奥圭介)

(ニュースレター令和6年残暑号より)

井奥圭介

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