弁碁士の呟き

囲碁雑録(11)-1988年『兄弟子への「恩返し」』④

| 2017年7月7日

(③から続く)

白の打ち過ぎ (第二譜)

 第二譜に移り、黒1から11まで左辺に根を下ろしたが、この間に白が8でなく9の左にケイマしておれば、黒は相当窮屈な姿で戦わなければならず困っただろうとのことだった。
だから、黒5で7と引き11と二間に構えるのが普通だった。危うく難を免れたのである。

 さて、白は右上隅に12とツケて利かしにきた。
これに反発して黒15にノビたのはよいが、17はあまりに緩い。
18と押さえれば、白が隅で小さく活きても上辺が薄くなり、大勢が黒に傾く筈だった。
白12では、19の左に開くのが普通。
また、黒21では、19の上に押さえるのが先手で保留の必要はない。

 黒21までで先手を握った白は、待望の左下隅の28にシマリ。
黒29から41までの攻防では、白29は33にツケる方がよく、また白38・40は単に61にトブベきだった。
この辺りはプロの眼から見るとお互いに失着の連発だが、指摘するとキリがないので省略。
白の打ち過ぎの大なるものは、42のスベリであった。
このため黒は、チャンス到来とばかり43から55まで白をシメつけて自軍を強化し先手を握ることとなった。
42で白が43の上にひかえて開き左下の地を確保しておれば、黒は骨ばかりで肉がなく容易な形勢ではなかったのだ(対局中私もそう考えていたのでホットした)。
また白50も悪く、51と一歩退いて堅実に守っていればシメつけはなかった。
白62までで黒が先手を握り、黒やや優勢といえる。

 さて、次の一手である。
当然に白の薄い上辺に眼を向け、しばしの考慮。
白2とイの間に打ち込み勝負に出るか、あるいはイの上からのぞみ中央に地をつけるか。
ここが思案のしどころと長考に入る。

(⑤へつづく)

赤沢敬之

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