法律よもやま話

(その15)所有者不明土地に関する法改正 ②所有者不明土地の発生予防

2023年1月1日

3 所有者不明土地の発生を予防するための方策
 所有者不明土地の発生を予防するために、以下のような不動産登記法の改正と相続土地国庫帰属制度の創設がなされました。

(1) 不動産登記法の改正
ア 相続登記の義務化
(ア) これまでは、土地や建物の所有者について相続が発生しても、相続登記をするかどうかは任意とされ、これが所有者不明土地が発生する大きな原因になっていました。
   そこで、改正後の不動産登記法では、相続・遺贈・遺産分割を原因として所有権の移転が生じた場合は、相続人に3年以内に相続登記を申請することが義務づけられました(76条の2)。正当な理由がなくこれに違反した時は10万円以下の過料が科されます(164条1項)。
(イ) しかし、いざ相続登記を申請しようとすると、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類を取り寄せるなど、煩瑣な作業が必要となります。
 そこで、改正後の不動産登記法においては、そのような相続人の負担を軽減するために、相続人が、相続登記に代えて、登記官に対し、自らが登記名義人の相続人であることを申し出れば、相続登記の申請義務を履行したものとみなされる相続人申告登記制度が創設されました(76条の3)。
(ウ) さらに、①遺贈の場合でも受遺者が単独で相続登記を申請できるようにしたり(63条3項)、②存続期間の満了等により消滅している賃借権等の抹消登記を除権決定を得る方法でし易くしたり(70条2項)、③解散した法人に対する担保権の抹消登記を単独で申請できる場合を認めたり(70条の2)など、登記手続の簡略化がはかられています。
イ 登記名義人の死亡等の事実の公示
 これまでは、土地や建物の所有権登記名義人の氏名や住所が変更しても、変更登記の申請がされない限り、登記簿上は変更後の氏名等が分からず、土地利用を阻害する原因となっていました。
 そこで、改正不動産登記法では、①氏名等の変更登記の申請を義務化し(76条の5)、②登記申請漏れを無くすために、登記名義人またはその相続人等がその名義で登記されている不動産の一覧(「所有不動産記録証明書」)の交付を法務局に請求できるようにしたり(119条の2)、③登記官が、他の公的機関から氏名等の変更情報を取得して、職権で変更登記を行う仕組みを導入したり(76条の6)などの措置がとられました。

(2) 相続土地国庫帰属制度の創設
 人口減少等を背景に土地の需要が縮小し土地価格も下落する中、相続しても、自ら使用することも換価処分することも出来ず、あげくには適切な管理のされないまま放置される土地が増えています。
 そこで、相続された土地が将来管理不全状態となることを防ぎ、所有者不明土地の発生を抑制するために、土地所有者が土地の所有権を放棄し、国庫に帰属させる制度が創設されました(「国庫帰属法」)。
 この制度を利用できるのは、①相続や遺贈により土地所有権を取得した人に限られ、②建物が建っていたり、境界紛争があるような土地は除かれ、③崖地や地中埋設物のあるような土地も除かれ、④申請者は一定の負担金を国庫に納付することが必要です。

井奥圭介

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