事務所便り

有為転変の夏―国葬をめぐって

| 2022年9月16日

 この夏は、6月の猛暑と最速の梅雨明けのあとの猛暑続きという異常な気候変動やコロナ禍の感染拡大、ロシアプーチンのウクライナ侵略の長期化に加え、参議院選挙投票日の直前の安倍元総理銃撃暗殺事件という衝撃的な出来事が重なる例年にない有為転変の夏でした。

 旧統一協会に恨みを抱く犯人の動機はともあれ、元総理の暗殺は許されない行為でありますが、この事件が契機となり予想外の世の動きが始まったのには驚かされました。

 犯人が開けたパンドラの箱から長年にわたり隠されてきた思わぬ事実が次々と飛び出しました。霊感商法、高額献金などの不法な反社会的行動で世間を騒がせた旧統一協会と政権与党の安倍総裁はじめ多くの議員との結びつきが次々と白日の下に曝され、参院選で大勝したばかりの与党を揺さぶるこことなりました。

 これに先立ち岸田総理は、いち早く独断で安倍氏の葬儀を国葬とするとの意向を示し、国会にも諮らず閣議決定により9月27日に実施を決めました。しかし、戦前の「国葬令」は廃止され、天皇の場合にのみ皇室典範で「大喪の礼」が規定されるのみで、多大な国民の税金を使って国葬を行う法的根拠はありません。「聞く耳」を売り物にする岸田総理としては、今回の悲劇を政治利用して安倍氏を天皇並みに祭り上げ、「モリカケサクラ」の虚偽答弁108回を帳消しにし、自己の政治基盤を安定化するチャンスと目論んだのでしょうが、これは少々早やとちりでした。

 案の定次から次へと旧統一協会の自民党首脳部や議員への選挙を通じての協力と引き換えに同協会の名称変更の理由なき同意や教会の悪のイメージの消去にお墨付けを与えてきた経過が報道されるに至りました。選挙後の内閣改造による新内閣の布陣にも多くの協会関与者が含まれ、「国葬」反対の民意が徐々に高まり、今や数々の世論調査で反対が60~80%にも達する勢いです。

 民主主義の基本が侵されようとする現在、今後果たしてどうなるのか注視して行きたいと思います。

(ニュースレター令和4年残暑号より)

赤沢敬之

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