ニュースレターより | 2026年1月8日新着
新しい年が皆様にとって良い年となりますことを心からお祈り申し上げます。
さて、国内政治も国際関係も激動する中、弁護士業界は、比較的、ニュースになるような出来事が少ないように思いますが、それでも動きがないわけではなく、昨年中にちょっと話題になり一部のマスコミでも報道された出来事として、“当番弁護士の成り手不足”問題があります。
「当番弁護士」というのは、各地の弁護士会が、名簿に登録した会員弁護士の中からその日の当番を決め、刑事事件で警察に逮捕勾留された被疑者から依頼があれば、当番の弁護士が無料で接見に行き、黙秘権があることなど、被疑者の権利保護に必要なアドバイスをするという制度で、平成2年に大分弁護士会などが始め、2年後には全国の弁護士会に広がりました。
そして、こうした弁護士会の取り組みを受けて、平成16年に、それまで国選弁護人は起訴された被告人にしか付けられなかったのが、起訴される前の被疑者段階から付けられるように法改正がなされ、当番弁護士は被疑者の国選弁護人として活動し、その報酬も国(直接には法テラスという独立行政法人)から支給されるようになったのです。
このように被疑者・被告人の権利保護に大きな役割を果たしてきた当番弁護士制度ですが、近年、その名簿に登録する弁護士の数が減り、残った弁護士に過度の負担がかかっているというのです。名簿への登録者が減った最大の理由として、特に被疑者段階の国選弁護人は、最大20日間の勾留期間内に何度も警察に接見に行き、被害者と示談の必要がある場合もその期間内にまとめなければならないといったように、密度の濃い活動を要求される一方、支給される報酬はそれに見合ったものになっていないということがあげられます。それでも、これまでは登録弁護士のボランティア精神に支えられて何とか制度を維持してきましたが、それだけでは続かない状況に立ち至ったのです。そして、いったん登録者が減り始めると、残った弁護士への当番の割り当て回数が増え、ますます負担が増大して、その弁護士もやめていくという負のスパイラルに陥っていたのです。
そこで、私が所属している大阪弁護士会では、当番弁護士の年間の割り当て回数を8回の人と4回の人の2ランクに分け、過度の負担が嫌でやめていった会員弁護士には年間4回の方に登録してもらうことで復帰してもらうという対策を採ることになりました。根本的には国選弁護人の報酬を引き上げることが必要ですが、それが実現するまではこうした対策が功を奏することを期待するしかありません。
私も、この当番弁護士制度発足の当初から名簿に登録し、依頼があれば被疑者国選弁護人として活動してきました。昨年中も3件の依頼を受け、最後に受けた詐欺の事件では、15日間の間に5回、北摂地域の警察署に勾留中の被疑者に接見に行き、最後は日曜の夜に被害者宅まで車で示談金を届け、何とか不起訴に漕ぎ着けました。そうして、被疑者からはもちろん、被害者からも感謝されました。こうしたことがあれば、例えいただける報酬が少なくても、それなりに達成感を感じることが出来ます。
とは言うものの、近年、私も、確かに年間の割り当て回数が多く少々負担に感じるようになりましたので、昨年65歳になったのを契機に、今年度で名簿からはずしてもらおうと考えていました。しかし、当番弁護士の成り手が足りないという話を聞いて、来年度は年間4回の割り当ての方で登録を続けようかと考えている次第です。 2026年元旦 (弁護士 井奥圭介)
(ニュースレター令和8年新年号より)