カテゴリ:日々の雑感
心温まる贈り物

千里南公園(撮影:赤沢敬之)
新年年明け早々、自宅に現金書留封書が届いた。心覚えもなくなにかの相談の謝礼金なのかと思い、差出人を見るとKY(KK)とある。
KK君は高津高校の同学年でクラスは違ったが気の置けない友人だった。しかし卒業後70年間、同君は同窓会にはあまり出席したことがなく、なにかの相談で20年か30年前に事務所に見えたことだけがかすかな記憶に残っていた。
文面を開くと、「私はKKの長女ですが、生前父より昔赤沢様より5万円を借りたことがある、とても助かった、返さなければと聞いたことがあります。当時の私はなぜ行動しないのかと思っていましたが、自分も歳を重ね、気持ちはあっても一歩を踏み出せないということを理解ができるようになりました。 先日赤沢様の年賀状でご住所が分かりましたので、突然で不躾ではございますが父の思いを継ぎお返し致したく送らせて頂きます。当時とは価値が変わっていて申し訳ありませんが、お受け取り頂ければ幸いです」とのことである。
一読して、そんなことがあったかなと記憶を辿ったが思い出せない。そのまま受け取るのも気が引けるので、4,5日後、記載の電話番号に電話をしたところ、KK君は昨年8月に亡くなり、お母様も2年前に亡くなっていたため、近くに住むYKさんが面倒を見ておられたようだった。お母様も生前「あのときは助かった」と話されていたとのこと。
お話を聞き、3人の方のそれぞれの思いを受け止めることにして、有難く頂戴することにした。KYさん「これでホッとしました」と言われたが、私も年始早々「心温まる贈り物」を頂いたほのぼのとした気分が今なお続いている。
(ニュースレター令和4年GW号より)
戦争と法
又々、「法とは何ぞや」というよりも法の無力さについて考えさせられる事態が起きました。ロシア軍によるウクライナ侵攻のことです。
仮に同様のことが日本国内で行われれば、殺人罪に該当し、しかも刑罰の一種として死刑制度を存続させている我が国の法制度のもとにおいては、被害者の数や行為の残虐性からして、首謀者は間違いなく死刑に処せられるであろうような行為が、白昼、公然と続けられています。
こうした戦争犯罪を禁止する法律はないのかというと、ないわけではありません。ただし、それは、国際間のことですので、条約という形をとることになります。例えば、ロシア軍の行為で今一番問題にされているのは、非戦闘員の民間人に対する殺害や拷問などですが、こうした行為は1949年に制定されたジュネーブ条約や1977年に制定された同条約の追加議定書で禁止されています。
さらに、戦争犯罪人を処罰する機関として、かつては、ニュルンベルグ裁判や東京裁判などのように、戦勝国によって一時的に国際軍事裁判所が設置されていましたが、2002年に発効した条約にもとづき、国連の下でそうした問題を専門に取り扱う常設の裁判所として国際刑事裁判所(ICC)が設立されました。
これらは、これまでに何度も悲惨な戦争が繰り返された歴史の反省に立って、人類が築いた貴重な制度だと言えます。
しかし、条約というのは、各国が承認しないと、その国には効力が及びません。ところが、問題のロシアは(さらには、アメリカや中国も)ICC設立の根拠となった条約を承認していません。したがいまして、現状では、ICCがウクライナで行われている大量殺害行為の首謀者を処罰することはできないのです。こうして見ると、法というものは、それを執行する力の裏付けがないと無力なものだということが分かります。
しかし、無力だと嘆いているだけでは、現に甚大な被害を受けているウクライナの人々は救われません。既にICCはロシア軍の戦争犯罪を裏づける事実の調査を開始しています。そうした地道な活動によりロシア軍の戦争犯罪の事実があばかれ、それを糾弾する国際世論が高まり、ひいてはそのことがロシアを追い込んでいく、それを期待するしかありません。
この事務所だよりが皆様のお手元に届く頃には停戦が成立し、ウクライナの戦火がおさまっていることを祈るばかりです。
(ニュースレター令和4年GW号より)
ステイホームでも歩く!
残暑お見舞い申し上げます。
この号が発行される頃にはパラリンピックの真っ最中ですね。いろいろ物議のあったオリンピックですが、コロナ下の人々にたくさんの感動を与えてくれたことは間違いないでしょう。僕も何度目頭を熱くさせたことか。パラリンピックもきっと我々に多くの勇気と感動を与えてくれているはずです。
そんな中、未だ変異株が猛威を振るう新型コロナ。デルタの次はラムダ、はては星座の名前を付けるとか。もういい加減にしてほしいですよね。
一方で政府はといえば、現役世代へのワクチン普及もなかなか進められず、感染症5類格下げの一手も打てず、あいも変わらず緊急事態宣言のバーゲンセール。寝る間も惜しんでコロナ対応に当たってくださっている医療関係者の方々、自宅療養者に24時間対応で寄り添っていただいているかかりつけ医のドクターの皆さんの苦労が報われるような政策を期待したいのですが・・・。
こうなると私たちができる最大の自己防衛策は自然免疫力を上げることかもしれません。マクロファージや好中球といった免疫細胞は血液やリンパに乗ってウイルスを退治してくれるそうです。なので運動することで血液やリンパの巡りをよくすることが免疫力を上げるのに何より大事とのこと。ステイホームでも家でじっとしてばかりでは危険。ぜひラジオ体操やウォーキングで体を動かしましょう。
ちなみに毎日続けるには日記やブログで日々の活動を記録するのがおすすめです。僕もブログを書いています。誰も読まないけど。
(ニュースレター2021年夏号より)

散歩中、蝉に止まられるの図
東京オリンピックに想う
皆様 残暑お見舞い申し上げます。暑さに異常気象が加わり、体も心も休まらない夏でしたが、疲れが出ませんよう、お気をつけください。
さて、事前にはそもそも開催すべきかどうかの議論すらあった東京オリンピックは、日本選手のメダルラッシュという結果を残して、終わりました。これは、開催前からある程度予測できたことですが、競技が始まり日本選手が活躍していくにつれて、やっぱりオリンピックはやってよかったという意見が強くなっていったように思います。私自身の心中も同様でした。
特に、私が、今回のオリンピックで印象に残ったことが二つありました。
一つは、柔道、水泳、卓球など、多くの競技で、男女混合戦が初めて実施されたことです。“多様性の尊重”が今回のオリンピックの目指した理念でしたが、男女相互の尊重もその一つです。しかし、それを実現するには、頭の中で考えるだけではダメで、一つの目的に向かって男女が協同することが最も近道なように思います。男女混合戦はまさにそれを具体化したものでした。
もう一つは、スケートボード、自転車BMX、スポーツクライミングなど、いわゆるストリート系の新競技の採用です。実のところ、ほとんど知識のなかった私は、そうした種目に興じる若者は、どちらかというとあまり行儀がよろしくないタイプという一種の偏見を持っていました。しかし、スケートボード金メダルの堀米雄斗さんのそのまま高校の生徒会長が務まりそうな容貌や、メダルを争うライバル同士でありながら相手の技が決まった時には自分のことのように喜び合う選手の姿を見て、これからはこうした若者が世界を動かしていくのだなという思いを強くしました。
色々なことを感じさせてくれた選手には「ありがとう。お疲れさま。」と言いたいです。願わくは、コロナ禍の制約のない中での大会にしたかったというのは多くの国民の思いでしょう。
(ニュースレター2021年夏号より)

執務室にて
コロナ爆発と五輪
昨年2月から世界を覆い尽くした新型コロナウィルスの感染拡大は、約1年半を経過した今も留まるところを知らず、世界の感染者が2億人を超え、わが国でも既に100万人を突破し、医療体制の崩壊が現実のものとなっています。東京を中心に発せられた緊急事態宣言の危急時に無理やり開催した無観客の東京五輪が8月8日に幕を閉じ、続くパラリンピックが、現在行われている最中です。
1年延期の後のコロナ拡大の中、政府や東京都は、医療専門家や国民の多数の中止を求める声を無視し、迷走を重ねた結果IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長などの「五輪とコロナは無関係」との「天の声」に従い、「安心安全」の一語を繰り返しつつ、何とか無観客の開催に到りましたが、果たしてこの「五輪」は今後どのように評価されるでしょうか。
私も、この危急下に競技に参加した世界のアスリート達の苦労や実技には多少の興味を覚えましたが、連日のテレビやマスコミの熱狂を煽るメダル獲得競争や開会式・閉会式の報道には、「異次元の世界」の出来事のように漫然と眺めるだけでした。
この2年近くの私たちの日常生活は、コロナとの終わりなき戦いの中で、マスクの着用、3密の回避、不要不急の外出自粛、種々の会合の中止などが習慣化した平板な日々の連続で、人との繋がりが薄れゆく毎日でした。平板な日は進行が加速度的に早く、貴重な時間がどんどん切り取られる思いですが、恐らくはしばらくの間は「コロナとの共存」の日常が新たな生活様式になるのではと予感します。そのためには、「自助第一」から脱却し公的支援策の確立を本位とする政治体制を作ることが必要です。そして、「安全安心」の一つ覚えの繰り返しだけで「感染者の自宅療養」を医療政策とする現政権やこれを支える関係者の責任を問い続ける第一歩が今秋に行われる衆議院議員選挙だと考えます。
イタリア・ルネサンスはペストという大災厄の苦難を乗り越えた末に花開いたといわれますが、我が国もこのコロナの厄災を乗り越え、希望に満ちたルネサンス(再生)を成し遂げることを期待してやみません。
(ニュースレター2021年夏号より)
宝塚で一期一会の出会い
日々の雑感 , ニュースレターより | 2021年5月20日
宝塚に住んで15年になります。
宝塚といえば宝塚歌劇。
その日はとにかく席がよくて、
宝塚は新作主義といって基本的に一度やった舞台は二度やらないの
それ以来チャンスがあれば娘や家族みんなで観に行っています。
未体験の皆様、一度大劇場を訪れてみてはいかがでしょうか。
(ニュースレター2021年春号より)
尿一滴、9800円で全身がんの早期発見!N-NOSE受けてみました
日々の雑感 , ニュースレターより | 2021年5月13日
数年前から話題の「線虫」を使うがん検査。
この線虫検査、尿一滴で、全身のがん(胃、大腸、肺、乳、膵臓、
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立ち上げ当初は提携病院のみの取り扱いだったようですが、
大阪にも駅前に「N−NOSEステーションOSAKA」があり、
というわけで僕もさっそく線虫検査を受けてきました。
といっても、やることといえばキットを購入、

第一生命ビルの地下1階にあります
結果は6週間後で、6月ごろ判明する予定です(
もしも検査結果が「陽性」だったらと思うとドキドキものですが、
もちろん「低リスク」ならホッと一安心ですが、油断大敵。
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今やがんは早期発見で治る時代です。
(ニュースレター2021年春号より)
沈黙の春
日々の雑感 , ニュースレターより | 2021年5月11日

大阪府立中之島図書館の桜(遠景は裁判所)
「沈黙の春」とは、1962年にアメリカで出版された生物学者レイチェル・カーソンの著作の題名です。カーソンは、この著作の中で、農薬で利用されている化学物質の危険性をとりあげ、それらによって鳥たちも鳴かない「沈黙の春」がおとずれると世に警告しました。しかし、今、世界は、農薬ではなくウイルスによって、鳥ではなく人間が押し黙る二度目の「沈黙の春」を迎えています。
日本では昨年1月に始まった新型コロナウィルスの感染拡大は、2年目に入った今も勢いはおとろえず、第三波が収まったと思ったらもう第四波の兆しが見られる状況です(4月12日現在)。
この自然からの侵襲に人間はなすすべもなく、1年目の昨春は、飲酒を伴う花見は各地で禁止となり、春の選抜高校野球は中止、プロ野球も開幕が6月にずれ込みました。
2年目の今春は、花見の禁止は変わらないものの、高校野球は予定通り開かれ、プロ野球も3月26日には両リーグとも開幕するなど、この歓迎されざる自然からの侵襲とのつきあいにも少しは慣れてきたように思います。
それでも、多人数が集まったり、懇親会を開いたり、孫が祖父母に会いに行ったりなど、これまで普通に行われていたことができないもどかしい状況は続いています。もしコロナの感染拡大に意味があるとすれば、そんな何でもない人の営みがかけがえのないものであることを我々に教えてくれたことくらいでしょう。
しかし、それももう十分です。ようやく始まったワクチン摂取の効果が出て、我々の生活が平常に戻ることを願ってやみません。それまで、皆様、お健やかにお過ごしください。
(ニュースレター2021年春号より)
コロナと裁判
日々の雑感 , ニュースレターより | 2021年1月19日
皆様 明けましておめでとうございます。今年が皆様にとりまして良い一年となりますことを心よりお祈り申しあげます。
さて、日本の裁判にもっとITを導入すべきであるという意見は、実は、今のコロナ騒ぎが起きる前からありました。これまで、日本の裁判は、裁判所に原告と被告双方が出頭し面つきあわせてやりとりをするのが原則とされ、遠方の裁判所の場合などに例外的に電話会議が認められる程度でした。しかし、SNSが普通に利用されている現代にこれではあまりにも時代遅れだということで、Teamsなどのインターネットによる通信手段を利用して、例えば弁護士事務所にいながら裁判に参加する、場合によっては証人尋問をするようなことまで認めるべきだという意見が叫ばれていたのです。
一方、そのようにIT化を進めるべきであるという意見に対しては、公開の法廷で裁判を受ける権利を保障した憲法に違反するとか、証人の顔を直接見もしないような尋問では正しい事実認定はできないといった根強い反対意見もありました。
しかし、昨年にコロナ騒ぎが起きてからは、感染防止の必要から、裁判所が当事者になるべく裁判所に来ないように指示し、裁判の進行に関する打合せを電話会議で済ませることが多くなりました。また、我々弁護士も、弁護士同士の会議や依頼者との打合せなどをオンラインで行う機会が増えました。そのような体験をふまえての私の率直な感想は、今の程度であれば電話会議やオンラインでもさほど不都合はなく、かなりのことができそうだということです。
しかし、これがもっと事態が進み、証人尋問までもオンラインで行い、裁判官にも相手方の弁護士にも一度も会わないままに裁判が終わってしまうというようなことになればどうなのか、それが果たして裁判と言えるのか、疑問はぬぐえません。
「必要が制度を変える」と言われますが、コロナが日本の裁判をどこまで変えるのか、注意深く見守っていきたいと思います。(弁護士 井奥圭介)
(ニュースレター2021年新年号より)
新年ご挨拶
日々の雑感 , ニュースレターより | 2021年1月18日

東大寺大仏殿
明けましておめでとうございます。新しい年を迎え、所員一同今年も心を新たに仕事に取り組みたいと念じています。どうかよろしくお願い申し上げます。
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さて、過ぐる年は、新型コロナウィルスの全世界への感染拡大による社会・経済・生活への計り知れない被害をもたらした1年でした。そしてその勢いは今なお収束どころか増大の一途を辿っています。今年は、コロナ対人類の対決をどのように決着させるかという重大な年になりそうです。14世紀中頃ヨーロッパで猛威を振るい約2500万人もの死者を出したという黒死病(ペスト)の大流行や、約1世紀前の全世界の死者5000万人というスペイン風邪の蔓延の例を繰り返すことのないよう願い、市民としてなすべきことを果たさねばと思います。
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そして国内では、コロナ騒動の渦中で菅内閣が安倍政権を引き継ぎました。良い仕事をしてくれることを期待したいものですが、その菅政権の最初の仕事が、学術会議の推薦名簿から政府の施策に批判的な6名の学者の任命拒否であったことは驚きと公憤を禁じ得ませんでした。組織改革の必要性に関しては種々議論があるものの、任命拒否の理由について「回答を差し控えます」の繰り返しや論点のすり替えでは、学術会議法違反や「学問の自由」「思想の自由」侵害という民主主義の根幹を蔑ろにするものと言わざるを得ません。「モリ・カケ・桜」問題で権力の私物化を批判された前政権の悪弊をも承継するものであり、法律家の一人として見過ごすことは許されないと痛感しています。
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一方、明るい話題といえば、小職の孫たちも夢中で読んでいるマンガ「鬼滅の刃」ブーム。残念ながら私自身は未読ですが、ノスタルジーあふれる大正時代の鬼退治の話だそうで、マンガも映画も異例の大ヒット、今やコロナ禍で喘ぐ日本経済の救世主とも言われているそうです。一つの事象が社会を動かす好例といえましょうか。
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あれやこれやでこの新年は、試練の年となりそうですが、マスク常用や過密を避け無用の外出自粛などの日常生活の不便に耐えながら、市民の権利を守る職務を誠実に全うしたいと念じています。
二〇二一年 元旦 (弁護士 赤沢敬之)
(ニュースレター2021年新年号より)